今週の株

👌今週の株👍:(株)IHI

技術をもって社会の発展に貢献  

株式会社 I H I は、資源・エネルギー・環境、社会基盤、産業システム・汎用機械及び航空・宇宙・防衛の4つの事業を主として行なっており、その製品は多岐にわたっています。

株式会社 I H I の歴史は、江戸時代の1853年に、ペルリ渡来を動機として隅田河口の石川島に、幕命により創設されたのが始まりです。1889年(明治22年)に有限責任石川島造船所となり、1960年(昭和30年)に株式会社播磨造船所を合併し、商号を石川島播磨重工業株式会社と改称しました。2000年(平成12年)には、日産自動車株式会社より宇宙航空事業を譲り受け、株式会社アイ・エイチ・アイ・エアロスペース(現 株式会社IHIエアロスペース)として営業を開始し、2007年(平成19年)に、商号を株式会社IHIに変更しました。

(株) I H I の株価の動きは下図のとおりです。昨今の株式市場の動向を反映しているとも思われますが、財務的な判断、特に業績が急激に悪化した昨年の2024年3月の決算分析から、業績を回復させた2025年3月の決算分析を通じて判断していきたいと思います。

2024年3月は業績悪化  ➡  2025年3月は業績回復

(株) I H I が毎決算期末に保有する現金・預金(キャッシュ)を、その獲得した4つの手段である①「事業の儲けで獲得したお金」、②「運転資金で獲得したお金」、③「設備・投資等の長期資金で獲得したお金」、④「お付き合いで獲得したお金」で区分したグラフは下図のとおりです。( なお、株価は「終値」でなく、有価証券報告書に記載されている各決算前の1年間の「最高株価と最低株価の単純な平均値」です。)

このグラフで一見して分かるように、2024年3月決算での青色のグラフ「事業の儲けでのお金」が急落、つまり、著しく業績が悪化しています。それとともに、緑色のグラフ「運転資金でのお金」が一挙にプラスに転じて、グラフが急上昇しています。その2024年の変化と2025年の変化の主な要因を示すと下図のようになります。

2024年3月決算は、区分されたすべての損益で損失を計上し危機的状況

下図は公開された有価証券報告書の損益計算書ですが、2024年3月決算期はすべての計算過程において損失( △  マイナス ) となっています。

2024年3月決算期の業績悪化が分かる「運転資金でのお金」の分析

2024年3月決算での青色グラフの「事業の儲けでのお金」が急落、つまり、著しい業績の悪化とともに、緑色のグラフ「運転資金でのお金」が一挙にプラスに転じ、グラフが急上昇しています。では、なぜ「運転資金でのお金」が一挙にプラスに転じているのでしょうか。それは、下図のとおり「短期借入金」を急増させているからです。サラリーマンの例えでいえば、給料が会社の都合で支払われなかった場合、やむえず短期の借入をするようなものです。給料(業績)がシッカリとあれば、借入をする必要はまったくありません。

なお、「運転資金でのお金」を確保する方法は、短期の借入だけではありません。売上に関する売掛金の回収を早めれば、お金は社内に早く入りますし、仕入に関する買掛金の支払を遅らせば、その分お金は社内に留まります。さらに、製造した製品などが売れずに社内に在庫として大量に残っている場合は、本来お金になるものが、お金にならず、物としてあるだけになってしまいます。

したがって、この売掛金、買掛金、在庫の動向により業績の良し悪しを判断することが可能となります。下図は(株) I H Iの緑色のグラフ「運転資金でのお金」の内訳表の補完資料です。「買掛金」「売掛金」「在庫」がその期の「売上高」に対してどのような割合なのかを示しています。朱色の枠が2024年3月決算の数値です。前期の2023年または当期の2025年と対比しても問題があることが分かります。

(株) I H Iが2024年3月決算期において危機的状況にあったことは、下記のような極端な解釈が成り立つためです。

「買掛金」・・業績の悪化によりお金がないので、仕入の支払期間を引き延ばした結果、平均月売上に対して3.02ケ月の有高となり、前期2.21ケ月に比較し0.81ケ月分の支払期間が引き延ばされています。

「売掛金」・・業績の悪化により無理な売上を計上し、その売上計上によって売掛金は、平均月売上に対して7.07ケ月の有高となりました。そしてこの残高は、前期4.21ケ月に比較し2.86ケ月分も回収期間が伸びている結果を示しています。

「在庫」・・業績の悪化は「在庫」の増加として現れます。平均月売上に対して9.03ケ月の在庫の有高となり、前期6.65ケ月に比較し2.38ケ月分もの在庫の増加となっています。

当期の2025年3月決算では見事に業績を回復

以上、中小企業で散見されるような極端な分析例を述べましたが、2025年3月の決算内容は、ものの見事に通常の数値にもどり、業績が完全に回復しています。すなわち、青色のグラフ「事業の儲けでのお金」が急上昇し、その結果として長期借入金を約151億円返済することができたため、茶色のグラフ「設備・投資等でのお金」はマイナスへ下降しています。また、業績の回復は、子会社などの関係会社にもおよんで「短期貸付金」約177億円を回収することができ、さらに業績の回復は、「未払法人税等」を多額に発生させ約213億円の増加を示しています。したがって、この「短期貸付金」「未払法人税等」を構成科目とする紫色のグラフ「お付き合いでのお金」がプラスへ上昇しています。なお、2024年3月決算で問題とされた緑色のグラフ「運転資金でのお金」は、業績の回復にともない2025年3月決算では、「短期借入金」の返済もあり通常の数値に戻っています。

株式会社IHIの今後の株価の動きについて

株式会社 I H I の「株価」が「事業の儲けでのお金」の何倍で推移しているかをみると、2023年2.14倍 ➡ 2024年3.47倍 ➡ 2025年5.70倍と徐々に高くなっています。しかし、割高ともいえず、2025年3月決算期の業績のV字回復を考慮すれば、今後も株価は上昇すると考えるのが財務面からの判断です。

人工知能(AI)の分析については、様々な上場企業を対象にしてきましたが、まだまだだなぁ、つまり「財務の専門知識をもった優秀な新入社員の『ありきたり』の回答に過ぎず、深堀できてないなあ」との思いが否めません。したがって、人工知能(AI)に分析させる質問の仕方や資料提供について検討していますので、しばらくの間は割愛しております。

「事業の儲けでのお金」「運転資金でのお金」「設備・投資等でのお金」「お付き合いでのお金」については下記のユーチューブで簡単な説明動画が見れます。ご参考にしていただければ幸甚です。
上場会社の財務分析手法 キャッシュフローの4つの原因分析とは? (youtube.com)

このブログでは別に「😊 今週の「株価当てクイズ」😢」を作っています
今週に追加した企業は、 株式会社シマノです。正解しても景品も賞金もありません。ご容赦ください。

今週の「九州テクテク歩き」:筑前の国(福岡県)の朝倉市筑前町に「神功古道(じんぐうこどう)」があります。この古道は、神功皇后が当地で勢力を張っていた「羽白熊鷲(はじろくまわし)」を討つために、北方の福岡市から進軍して来た道であるとの「いわれ・由来」が書かれた看板があり、その奥に秋桜が一面に咲いていました。

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最後まで見ていただきありがとうございました。
[ 投稿日 2025年11月3日(月曜日)  投稿者  岡 陽三郎

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