今週の株

👌今週の株👍:三菱商事(株)

経済・社会・環境の三価値を同時実現  

三菱商事は日本の三大総合商社の一つです。1970年代より資源開発への直接投資(天然ガスや原料炭)を手掛けるようになり、1980年代には食料流通などのバリューチェーンの構築を展開、1990年代にはコンビニエンスストアチェーンのローソンを通じた消費者マーケットの開拓など、川上から川下までの領域にわたる投資や経営参画を通じて収益拡大を目指しています。

株価の動きは下図のとおり決算後下落し、5月から徐々に上昇に転じていますが、この上昇傾向が続くのかどうか、財務的に見てみたいと思います。

「業績の伸びがない、株価は高くなりすぎ」?

三菱商事が毎決算期末に保有する現金・預金(キャッシュ)を、その獲得した4つの手段である①「事業の儲けで獲得したお金」、②「運転資金で獲得したお金」、③「設備・投資等の長期資金で獲得したお金」、④「お付き合いで獲得したお金」で区分したグラフは下図のとおりです。( なお、株価は「終値」でなく、有価証券報告書に記載されている各決算前の1年間の「最高株価と最低株価の単純な平均値」です。)

グラフを一見すると、青色のグラフ「事業の儲けで獲得したお金」は横ばいで、「業績の伸びがない、株価は高くなりすぎ」と判断されます。そして茶色のグラフ「設備・投資等で獲得したお金」がプラスになって高止まり、つまり「投資活動のための支出をしていないのでお金は残ってプラスとなっている」と判断されます。はたして三菱商事ともあろう企業が、ほんとうにそうなのでしょうか。

青色の「事業の儲けでのお金」と茶色の「設備・投資等でのお金」の関係

サラリーマンの例でいえば、「事業の儲けで獲得したお金」とは、給与が振り込まれている預金の残高といえるでしょう。そして「設備・投資等で獲得したお金」とは、将来の大きな支出に備えて蓄えているお金といえるでしょう。仮にそのサラリーマンの預金残高がチットも増えていなくても、将来の億ション購入のために、その預金残高から多額の定期預金をしていたとするならば、「給与が振り込まれている預金の残高の伸びがないからダメな奴だ」とはなりません。

実は三菱商事もこのサラリーマンと同じでした。つまり、「事業の儲けで獲得したお金」を決算期ごとに大きなお金を「設備・投資等で獲得したお金」に振り替えていたのです。したがって、仮に「事業の儲けで獲得したお金」を「設備・投資等で獲得したお金」に振り替えていなかったとした場合のグラフは下図のようになります。

青色のグラフ「事業の儲けで獲得したお金」は急激に上昇し、「設備・投資等で獲得したお金」がマイナスへ下降するという積極的な投資活動を示すグラフとなっています。

「儲けのお金」を「別途積立金」へ、さらに「儲けのお金」で自社株を消却

三菱商事は「事業の儲けで獲得したお金」である「利益剰余金」を、将来の巨額の投資活動のために「設備・投資等で獲得するお金」である「別途積立金」(茶色の線)へ多額の金額を振り替えています。さらに「事業の儲けで獲得したお金」である「利益剰余金」で購入した自社株を消却し続けています。

上記の「別途積立金」の増加と「自己株式の消却」が仮になかったとすれば、繰越利益剰余金は2024年で約 9,508 億円( 5,740億+3,768億 )、2025年で約 5,555 億円( 810億+4,745億 )の繰越利益剰余金(事業の儲けで獲得したお金)が残ることとなります。それをグラフで表したのが下図のグラフです。

茶色のグラフ「設備・投資等で獲得したお金」のプラス、マイナスの意味

例えばサラリーマンの方が独立してベンチャー企業をスタートさせたとします。つまり、自己資金800と銀行からの借入200で、土地や店舗を取得する資金1,000を調達したとします。この時点ではまだ「設備・投資等で獲得したお金」は差引ゼロです。その時の財務状態は下図のとおりです。

事業を展開して1年間で黒字 800 (利益)となったので、この「事業の儲けで獲得したお金」の800のうち300を将来の設備投資のためにと資本金・別途積立金に組み入れたとします。この場合の財務状況は下図のとおりで「設備・投資等で獲得したお金」の茶色のグラフははプラスへ向けて上昇します。ただし、「事業の儲けで獲得したお金」を「設備・投資等でのお金」に300振り替えたので、「事業の儲けで獲得したお金」は500(800-300)と実際より300減少した数字になってしまいました。

さらに2年目の事業を展開して黒字(利益)が700 ( 事業の儲けで獲得したお金はプラス700)となったので、この「事業の儲けで獲得したお金」で700の設備・投資を行ったとします。この2年目の財務状況は下図のとおりで「設備・投資等でのお金」の茶色のグラフははマイナスへ向けて下降します。

以上、独立したサラリーマンの例で青色のグラフ「事業の儲けでのお金」と茶色のグラフ「設備・投資等でのお金」の関係を説明しましたが、三菱商事もこの例のように「事業の儲けでのお金」は急上昇し、投資活動も世界的標準で活発化させて、極めて優秀な財務内容です。

三菱商事株式会社の今後の株価の動きについて

三菱商事「株価」が「事業の儲けでのお金」の何倍で推移しているかをみる場合は、「事業の儲けでのお金」の計算に留意する必要があります。すなわち、経営戦略的に「事業の儲けでのお金」である「繰越利益剰余金」を減少させて「別途積立金」の増加と「自己株式の消却」を増加させている戦略を考慮しなければならないということです。したがって、上図は考慮していない数値、下図は考慮はている数値です。

「別途積立金」の増加と「自己株式の消却」を増加させている場合 ↓

「別途積立金」の増加と「自己株式の消却」を増加させていないとした場合 ↓

「事業の儲けでのお金」である「繰越利益剰余金」を減少させて「別途積立金」の増加と「自己株式の消却」を増加させていないとした場合は、2025年で4.42倍です。したがって、この4.42倍はごく普通の割合であることから三菱商事の株は今後も上昇するというのが、財務分析による見立てです。

人工知能(AI)の分析については、様々な上場企業を対象にしてきましたが、まだまだだなぁ、つまり「財務の専門知識をもった優秀な新入社員の『ありきたり』の回答に過ぎず、深堀できてないなあ」との思いが否めません。したがって、人工知能(AI)に分析させる質問の仕方や資料提供について検討していますので、しばらくの間は割愛しております。

「事業の儲けでのお金」「運転資金でのお金」「設備・投資等でのお金」「お付き合いでのお金」については下記のユーチューブで簡単な説明動画が見れます。ご参考にしていただければ幸甚です。
上場会社の財務分析手法 キャッシュフローの4つの原因分析とは? (youtube.com)

このブログでは別に「😊 今週の「株価当てクイズ」😢」を作っています
今週に追加した企業は、 シャープ株式会社です。正解しても景品も賞金もありません。ご容赦ください。

今週の「九州テクテク歩き」:肥後の国(熊本県)熊本市の南西に見える金峰山にある「峠の茶屋」です。その昔、夏目漱石も憩い、「智に働けば角が立つ・・」で有名な「草枕」にも出てくる峠の茶屋です。「智」も「情」も「意地」もないオッサン(私)が、紅葉にひかれて撮った写真です。

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最後まで見ていただきありがとうございました。
[ 投稿日 2025年11月10日(月曜日)  投稿者  岡 陽三郎

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