「存在意義」「使命」「信条」

アステラス製薬株式会社は、平成17年(2005年)に山之内製薬と藤沢薬品工業が合併して発足した会社です。旧山之内製薬の泌尿器領域の医薬、旧藤沢薬品工業の免疫抑制剤などを主力商品として、国内製薬メーカー大手5社の1つです。
アステラスの株価は下図のとおり2024年9月以降は下降しています。したがって、どこか財務的な問題があるのでしょうか。

株価が下落するほど4つのグラフは異常な動きではない
アステラスが毎決算期末に保有する現金・預金(キャッシュ)を、その獲得した4つの手段である①「事業の儲けで獲得したお金」、②「運転資金で獲得したお金」、③「設備・投資等の長期資金で獲得したお金」、④「お付き合いで獲得したお金」で区分したグラフは下図のとおりです。( なお、株価は「終値」でなく、有価証券報告書に記載されている各決算前の1年間の「最高株価と最低株価の単純な平均値」です。)

株価が下落するほど4つのグラフは異常な動きではありませんから、それぞれのグラフの動きについて見てみたいと思います。
業績は極めて順調、営業利益、経常利益ともアップ
「事業の儲けで獲得したお金」を構成する「当期純利益」は、2,912億円➡3,197億円と順調に伸びています。日々の営業の成果である「営業利益」も伸びていますし、「受取配当金」などの営業外の収益も伸びて「経常利益」も順調です。また、「事業の儲けで獲得したお金」を構成する「前期からの繰越利益剰余金」、つまり、前期までに「事業の儲けで獲得したお金」も十分な配当金の支出がされても堅調に積み上がっています。したがって、この青色のグラフ「事業の儲けで獲得したお金」の分析からは、株価が下降しているのは不思議です。


• 事業の儲けで獲得したお金(1株あたり):
o 2023年:464円
o 2024年:544円
o 2025年:657円
o 傾向: 増加傾向にあり、事業の収益性が向上していることを示唆しています。
• 収益力の向上: 「事業の儲けで獲得したお金」が継続的に増加していることは、アステラス製薬の事業そのものの収益性が堅調に推移していることを示しています。これは非常にポジティブな兆候です。
運転資金としての短期借入金やコマーシャルペーパーも順調に返済
売掛金等の回収期間が長く、買掛金等の支払期間が短い場合には、買掛金 - 売掛金 = マイナスとなり、その資金調達のために、一時的な借入や、コマーシャルペーパー(短期での返済を約束した手形)を発行しますが、2025年3月決算ではともにその返済が進んでします。これは業績が順調である、つまり「事業の儲けで獲得したお金」が潤沢だからできることです。
また、下図のとおり売掛金の回収期間も平均の月売上の3.39ケ月から2.95ケ月と早まっています。なお、運転資金を拘束する在庫については、平均の月売上の1.86ケ月から1.99ケ月と少し悪化していますが、問題とされる状況ではありません。


• 運転資金で獲得したお金(1株あたり):
o 2023年:53円
o 2024年:270円
o 2025年:117円
o 傾向: 2024年に大きく増加したものの、2025年には減少しています。これは、売掛金や棚卸資産などの運転資本の増加・減少、あるいは買掛金や借入金などの短期的な調達の増減によって変動していると考えられます。
• 運転資金の変動: 「運転資金で獲得したお金」の増減は、事業活動における資金繰りの効率性を示します。2024年の増加は、一時的な運転資金の増加(例えば、売掛金や棚卸資産の増加、または買掛金の減少など)があった可能性を示唆しますが、2025年の減少は、運転資金の効率化が進んでいるか、または短期的な資金調達が減少したことを示している可能性があります。
将来が楽しみな茶色のグラフ「設備・投資等で獲得したお金」の下降線

設備・投資等を積極的に行うことは、企業の将来の発展のために必要不可欠な財務戦略です。設備等を取得するための資金は、長期の調達資金(社債・長期借入金)で対応します。子会社などの関係会社の株式を取得して活発な投資活動をする場合も同様です。
下図のとおりアステラスは、この設備・投資等を2024年3月決算では8,387億円増加させ、2025年3月決算では3,193億円増加させています。それに対して社債・長期借入金などの調達資本は2024年では4,185億円の増加、2025年では1,474億円の増加とおよそ50%にしか過ぎません。したがって「調達資金 - 設備・投資等 = マイナス」のマイナスは大きくなりましたがそのマイナスの不足資金は、潤沢な「事業の儲けで獲得したお金」でカバーできています。したがって、茶色のグラフ「設備・投資等でのお金」がマイナスへ向けて下降しているのは、青色のグラフ「事業の儲けでのお金」がプラスへ向けて上昇しているからこそ見れるグラフの動きです。この分析からは、株価が下降しているのは不思議といえます。


• 設備・投資等の長期資金で獲得したお金(1株あたり):
o 2023年:-283円
o 2024年:-556円
o 2025年:-655円
o 傾向: 継続的にマイナスであり、設備投資や研究開発、M&Aなどの長期的な投資のために資金を調達している(または、これらの活動で資金を消費している)ことを示しています。このマイナス幅の拡大は、積極的な投資活動を示唆します。
• 積極的な投資: 「設備・投資等の長期資金で獲得したお金」が継続して大きなマイナスとなっていることは、将来の成長に向けた積極的な設備投資、研究開発、またはM&Aなどの投資活動が行われていることを示唆します。これは、一時的にはキャッシュフローを圧迫しますが、中長期的には企業の競争力強化や収益拡大に繋がる可能性があります。
アステラス製薬の今後の株価の動きについて
以上、アステラス製薬の財務について見てきたように ( 「お付き合いで獲得したお金」は、大きな変動がないため説明を割愛しています。 )株価が下降しているのは不思議で、財務以外の各種の要因によると思われます。そこで、「株価」が「事業の儲けでのお金」の何倍で推移しているかをみると、2023年の4.34倍から2024年が3.59倍と低くなり、さらに2025年は2.47倍と低くなっています。したがって、現在まで下降を続けてきましたが割安感が出ていると判断します。


今後の株価予測
ご提供いただいたグラフにある「株価(単位:円)」と「事業の儲けで獲得したお金」の比率(株価 ÷ 事業の儲けで獲得したお金)を見てみましょう。
• 2023年:2,015円 ÷ 464円 ≒ 4.34
• 2024年:1,956円 ÷ 544円 ≒ 3.59
• 2025年:1,625円 ÷ 657円 ≒ 2.47
この比率は、事業の儲けに対して株価が何倍かを示しており、一般的にこの数値が低いほど、事業の収益力に対して株価が割安である、あるいは収益成長に対して株価の上昇が期待できると解釈できます。
• 傾向: この比率は低下傾向にあります。これは、事業の儲け(PERのPBRを逆にしたようなイメージ)が株価に対して順調に伸びている、あるいは株価が事業の儲けの伸びに対して相対的に抑えられていることを示唆します。
株価予測のポイント
- 事業の儲けの継続性: 今後も「事業の儲けで獲得したお金」がグラフの予測通りに増加していくことが、株価上昇の重要な鍵となります。特に、2026年予測の801円という数字は、大幅な増加を示唆しており、これが実現すれば株価にとって追い風となるでしょう。
- 投資の成果: 現在行われている積極的な設備・投資等が、将来的に「事業の儲け」のさらなる増加に結びつくかどうかが重要です。研究開発の成功や新製品の市場投入が、収益向上に貢献することが期待されます。
- 市場環境と競合: 製薬業界全体の動向、新薬開発の進捗、競合他社の動向なども株価に影響を与えます。
- PER・PBRなどの指標: ご提供いただいた「株価 ÷ 事業の儲けで獲得したお金」の比率が低下傾向にあることは、ポジティブなサインと捉えられます。この比率が、過去の平均値や同業他社と比較してどうであるかを見ることで、より詳細な評価が可能になります。
株価予測(定性的な見解)
ご提供いただいたデータのみから具体的な株価を断定することは困難ですが、以下の点を踏まえて、今後の株価を展望します。
• ポジティブ要因:
o 「事業の儲けで獲得したお金」の増加傾向。
o 「事業の儲けで獲得したお金」に対する株価の割安感(比率の低下)。
o 将来の成長に向けた積極的な投資。
• 懸念要因(潜在的):
o 「設備・投資等の長期資金で獲得したお金」のマイナス幅の拡大は、借入金増加など財務リスクを高める可能性もゼロではありません。(ただし、十分なキャッシュフローがあれば問題ない場合が多いです。)
o 運転資金の動向によっては、一時的な資金繰りの悪化リスクも考慮する必要があります。
結論として、 アステラス製薬は事業の収益性が向上しており、将来の成長に向けた積極的な投資も行っていることから、中長期的な株価上昇のポテンシャルは高いと考えられます。特に、2026年の「事業の儲けで獲得したお金」の予測値が実現するようであれば、株価はさらに上昇する可能性があります。
ただし、株価は様々な要因で変動するため、以下の点に留意することが重要です。
• 定期的な情報収集: 決算発表やIR情報などを通じて、最新の財務状況や事業戦略を確認することが不可欠です。
• 市場全体の動向: 経済全体の状況や株式市場全体のトレンドも株価に影響します。
• 個別株のリスク: 製薬業界特有のリスク(新薬開発の失敗、薬価改定、規制変更など)も考慮する必要があります。
ご提供いただいたグラフの赤の点線(各決算期末前1年間での「最高株価と最低株価の単純な平均値」)と、事業の儲けで獲得したお金の推移を比較すると、株価の平均値も事業の儲けの増加に伴って、概ね上昇傾向にあることが伺えます。これは、事業の成長が株価に織り込まれていく自然な動きと言えるでしょう。
最終的な投資判断は、ご自身の責任において、より詳細な分析と多角的な情報収集を行った上で行うようにしてください。
「事業の儲けでのお金」「運転資金でのお金」「設備・投資等でのお金」「お付き合いでのお金」については、下記のユーチューブで簡単な説明動画が見れます。ご参考にしていただければ幸甚です。
上場会社の財務分析手法 キャッシュフローの4つの原因分析とは? (youtube.com)
このブログでは別に「😊 今週の「株価当てクイズ」😢」を作っています。
今週に追加した企業は、京セラ(株) (株)三菱UFJフィナンシャル・グループです。正解しても景品も賞金もありません。ご容赦ください。
今週の「九州テクテク歩き」:豊後の国(大分県)の飯田高原から「法泉寺温泉」へ下っていく山道に、なぜか釣り船に乗っている釣り人がいました。当然のことながら声をかけても返事はありません。

最後まで見ていただきありがとうございました。
[ 投稿日 2025年8月4日(月曜日) 投稿者 岡 陽三郎
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